奇妙なコイン
やたらと眠い休日だった。二、三度ウツラウツラとしたあと、とうとう意を決してコーヒーを買いに行くことにした。
自動販売機に1000円札を入れて、コーヒーを買う。ガタン、と音を立てて、コーヒーは出てきたのだが……お釣りが出てこない。
何度かお釣りのレバーをガチャガチャしていると、ちゃりん、となにかコインが出てきた。
金額の書いていない、奇妙なコインだった。プラスチックではない、金属のずっしりとした重みがある。表にも裏にも、植物のような幾何学的な模様が描かれている。きっと誰かがイタズラで入れたのだろう。
私はふと、もう一度コインを入れてみるとどうなるだろう、と思いついた。自動販売機にコインを入れてみると、パッ、と商品が点灯した。おお、使えるようだ。私は適当に、水を買ってみる。
ガタン。買えた。
ちゃりん。おや、と思ってお釣りをのぞくと、また同じコインが帰ってきていた。
ふむ……これはどうも……。
しばし思案して、またコインを入れてみる。
パッ。ガタン。ちゃりん。
またコインを入れてみる。
パッ。ガタン。ちゃりん。
色とりどりの飲料が落ちてくる。
何度めかボタンを押したとき、私は急に怖くなった。何か、詐欺に問われないだろうか──。
ガタン。それでも飲み物が落ちてくる。しかし、いつまでたってもちゃりん、とお釣りが落ちてこない。
ここが、やめどきなのだろう。
私は落ちてきたたくさんの飲み物を抱えて、逃げるようにその場を逃げ出した。
家に戻った私は、やはり不安がもぞもぞと持ち上がってきた。持ち帰った商品の値段を計算する。
きっかり千円だ。私は安心した。
終わり